「フルオロポリマー」で攻める

先日受験したトライアルの課題が「フルオロポリマー」の関わる特許でした。

結果としては不合格で、レビューをし、どこで決定的に間違ったのかを検証したのですが、これがいまいちすっきりと問題点を見つけることができず……。

決して「完璧だったはず!」などと思っているわけではなく、「自分で自分の訳文の問題点がクリアに見えていないことがかなり問題だ」と危機感を抱きました。

あまり長時間、同じ問題についてうんうんと考えすぎてもよい知見は得られないと思い、「フルオロポリマー」をキーワードとしてひっかかった日本語の明細書を分野を問わず10件ほど乱読してみることにしました。レビューはいったんペンディングして、後日もう一度立ち戻ろうと思います。

明細書は調整や分離方法などの純粋に化学的な話のものから、手術用に使用される部材の材料としてのフルオロポリマーなど様々なものがあり、使用用途もコーティング材料としてや接着剤としてなど多岐に亘り、凝り固まった自分の頭をほぐすのにちょうどよいです。

このような作業はすぐに実力向上に直結するわけではなくても、あとからじわじわ利いてきそうだな、と感じています。

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先日応募した3件の会社からレスポンスがあり、1社は書類選考落ち、2社からトライアルを送付いただきました。

どちらも締切りが近いですが、一読したところ両方とも化学合成関係の明細書のようなので、うまく頭を切り換えながら、自分がよく陥りがちな視野狭窄や思い込みを防ぐ相乗効果も狙いつつ取り組もうと思います。

広く深く

チェッカーの案件で「発酵」の話があったことをきっかけに、発酵の入門書を読みました。

そこで改めて感じたのが、何らかの化学物質の名前でも、酵母や微生物の名前でも、「全く聞いたこともない」という状態と「(そのワードに)筋道の立った文章中で一度でも出会ったことがある」という状態とでは、特許明細書を読む際に覚える抵抗感に雲泥の差があるな、ということです。

バチルス・サチルスという細菌が具体的に「どのような細菌で、どのような働きをどのようなメカニズムで行うのか」までを理解しているわけではなくても、それが細菌の名前であるという最低限のことを知っているだけでそのワードに対する心理的なハードルはぐっと下がります。

その上さらに「それが俗に納豆菌と呼ばれるものであり、稲藁に多く存在している」というところまで知識として持てば、より身近なものとしてイメージできるように……。

新しい分野に挑戦しようとするときには、最初はこれくらいのざっくりとした理解度で日本語で書かれたその分野の明細書を乱読していくのがちょうどいいのだろうな……とようやく実感を持ってそのように思えるようになりました。

最初から物事をつぶさに把握しようと思っても、重箱の隅をつつくような無駄なドツボに嵌まりかねない上に、ケースごとに細かな疑問点はいくらでも噴出してくるものなので、実際に一つ一つの明細書に向き合うとなったときに、じっくりと理解度を深め、知識を先鋭化して蓄積していくのが効率的なのでしょう。

それを淡々とやり続けていくうちに、他分野とも関わり合って、広く深い知見を持つことができるようになっていく……。

発明の課題の要点

コーティング剤(フルオロポリマー組成物)の溶剤が低沸点の場合

→揮発性が高いため、(毒性がある場合)作業者に危険が及ぶ場合がある

→揮発速度が速いため、コーティング材の粘性にムラが出る⇒ピンホールなどの発生原因に

低沸点ではダメ

 

では、高沸点では?

→揮発性が低いため、コーティング材と基材の界面に空気が閉じ込められる⇒膨れが発生する

 

膨れについて

http://www.owell.co.jp/knowlegde/trouble/fu003.html

→乾燥が十分でないと発生する

⇒さらに、膨れが割れて空気が除去されると割れまたは凹みを発生させる

→これを解決するために用いられるのがフッ素化液体

 

20170516_024711

 

 

【WO2008094724】

allowed to evaporate or removed by application of heat

特許の内容:フルオロポリマー組成物を基材表面にコーティングする

 

After applying the coating, the solvent is allowed to evaporate or removed by application of heat.

<最初の訳>

コーティングの適用後、溶剤を蒸発させるか、又は加熱によって除去する。

<変更後>

コーティングの適用後、溶剤を加熱によって蒸発させるか又は除去する。

 

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by application of heatはallowed to evaporateにもかかっているか?

→最初は「removed」のみにかかっていると判断した。

<理由>

溶剤を蒸発させることも除去することもコーティング剤から溶剤が取り除かれるという同一の結果をもたらす行為のため、前者は揮発による自然乾燥を指していると推察し、”by application of heat” “は”is removed”にのみかかっていると判断した。

http://www.oikawatosouten.jp/kisochishiki/kansou.html

乾燥の種類

塗膜の乾燥メカニズム

揮発乾燥:塗膜中の溶剤が自然蒸発して、塗膜が硬化、乾燥するタイプ。

融着乾燥:塗膜中の溶剤や水分の蒸発とともに、分散されていた樹脂の粒子が接近、融着して、連続した塗膜となる。

酸化重合乾燥:塗料中の溶剤が蒸発して、大気中の酸素と重合反応し硬化、乾燥する。

重合乾燥:触媒、硬化剤を混入することで樹脂が反応し、重合を伴い硬化して行く。

熱重合乾燥:加熱することで塗料中の樹脂が反応し、重合を伴い硬化する。融解冷脚乾燥加熱によって融解した塗膜が、冷却することで硬化する。

 

→確かにコーティングの乾燥方法には溶剤の自然揮発もあるけれど、それだけでは根拠に乏しい。

 

http://www.nipponfusso.com/information/lecture.html(参照)

フッ素樹脂コーティングはフッ素樹脂を塗装し、熱処理にて溶融させることによってコーティングしていきます。

このとき、一般的には400℃程度の温度が、溶融させるごとに掛かっています。この環境での被コーティング母材の熱変形、特に残留応力による変形と熱歪みについて考えて行きたいと思います。

 

→フッ素樹脂コーティングは、コーティング材の塗装後に(基本的には)高温にさらす必要がある。→オーブンなどによる加熱(溶剤の除去+場合によっては硬化反応

(⇒この高温加熱による母材の変形や変質、コーティングの膨れや凹みの発生がしばしば問題になる)

(⇒バインダーを使用して常温乾燥させるやり方もあるようだが、今回の特許では特に論じられていない【http://coating.th-angel.com/2014/06/blog-post.html】)

 

この明細書中の実施例ではすべての例でオーブンによる加熱が施されている自然揮発は想定されていないと考えた方が自然?

→ではby application of heatはallowed to evaporateにもremovedにもかかるのか

 

通常、evaporateとremovedは、evaporateした結果、removeされるという関係ではないのか?(「蒸発又は除去する」という言い方は日本語として不自然か?)

 

「蒸発又は除去」

「蒸発又は除去」という言い回しは存在する→が、「加熱により」と限定されるとどうか

 

コーティングの適用後、溶剤を加熱によって蒸発除去する。

 

としたほうがより自然か。

 

⇒どのような言い回しが使用されているかを調査する

(件数制限超過のペナルティが解除され次第…)

トライアル/光ディスク

送られてきたチェッカーのトライアルを返送しました。

自分で一から訳するトライアルとはまた違った類の神経を使うものだなとしみじみ感じました。

三単現のsが抜けているとか、原形であるべきところが現在進行形になっているとか、あるいは同一用語に異なる訳語が当てられているとか(もっと単純なところでいえばピリオドが落ちているとか)、そういった細かな引っかけ的なものが散りばめられているわけですが、自分で訳した文章ではない分、翻訳そのものとはまた別の難しさがありました。勉強になりました。

このトライアルを受ける中で、チェックとはいえただ漫然とミスを探すだけでは得られるものが少ないし、内容を理解できるようになりたいと思い光ディスクについて勉強したのですが、初めこそ反射的に「うっ」と思ってしまったものの、半導体の回路を基材上に作製するのと似たように、フォトレジストや成膜技術が使われているのだと気づいてから、だいぶ取っつきやすく感じるようになりました。

 

新たに2件、トライアルに応募しました。現在その2件は返信待ちですが、様子を見つつさらに応募していこうと思います。

 

以下、光ディスクノートから。

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光ディスクとは?

■概要

・主として2種類ある

1.生産工場で予め情報が記録されるもの(プレス版)

→グルーブからピット(ディスク上に空けられる微細な凹み)を作製する

 

2.ユーザーが任意の情報を記録できるもの(記録型)

…の中でも、ライトワンス型とリライダブル型がある

・塗膜された有機(又は向き)色素をレーザー照射によって化学変化させる

・アモルファス材をレーザー照射によって結晶構造に

→再びレーザー照射により結晶構造を解く→リライダブルに

 

※いずれにせよ原盤(スタンパー)の作製が必要(半導体作製でいうところのガラスマスク)

☆スタンパーは鯛焼きの焼き型のようなもの

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■光ディスクの作製工程(大まかに)

原盤(スタンパー)を作る

→スタンパーを型としてポリカーボネート基板を作る

→基材の表面に記録層などを形成する

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■スタンパーの作製工程(マスタリング

ガラス基材を研磨する(表面を平滑にする)↓

ガラス基材にレジスト剤を塗布(フォトレジスト技術の使用)↓

レーザーを照射してらせん状のグルーブを円盤状に露光する(カッティング)↓

現像する(露光部が除去されるポジ型)→グルーブが形成される↓

導電処理(ニッケルメッキ)→電気を通さないガラスマスターに電気が流れるようにする↓

(先に成膜したニッケルを電極として)電解メッキを行い、スタンパーを複製する(凹凸が反転したものが作製される)→メタルファーザー(マスター)が作製される↓

メタルファーザーからさらに電解メッキによってメタルマザーが作製される(凹凸は反転している)↓

スタンパーの大量生産(複製)が可能に

これらのスタンパーからポリカーボネートディスクを作製する↓

☆整理

・メタルファーザーはガラスマスターからは凹凸の形状が反転している

・メタルマザーはガラスマスターの凹凸の形状と同一

研磨、打ち抜き↓

完成!

↑書き込み型の場合は以上

↓ROM型(プレス版)の場合は、ここからさらにディスク上に任意のピットを作製する

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レーザー光線によって記録を書き込み、同じくレーザー光線の反射によって記録を読み取る

■メリット

光を使用して読み書きする

→磁気ディスクよりも埃、指紋の付着などの影響を受けにくい

■デメリット

・大容量化が難しい

→レーザーの波長長さで記録密度の限界が決まるから(半導体作製と同じ)

→さらに、基材の材質(例えば、ポリカーボネート)によっては可視光線よりも短い波長である紫外線が使えない(紫外線を吸収して劣化するため)。

【対策】

・記録面の多層化

・ホログラム技術(立体的に情報を書き込む←記録面を多層化するわけではない)

→レーザー光の角度を変えることによりディスク上の同一箇所に複数ページを書き込める

参照:http://www.keyman.or.jp/at/30008344/

(ホログラムの例:紙幣の偽造防止用ステッカーなど)

・液浸(マスタリング時)

→屈折率を調整することによって、同じ波長の光線でもより微細な加工を可能にする

など

一日一日無駄にすることのないように

法事やご不幸事などでバタバタしつつも、勉強時間にはなるべく影響を出さないように…と心がけつつ。今週はちょっと思うようには進められませんでした(一日平均5~8時間)。ただ、その分時間いっぱい集中はできていたかと思います。

 

ご不幸事…といえば、私は今二十代なのですが、昔の同級生の中でも既にご病気などで亡くなられている方も何名かいらっしゃって、人生は何があるのか分からないんだ、自分の意思とは関係なく突然幕を引かれてしまうこともあるんだ…ということを、改めて強く感じました。

今、健康に仕事をして、勉強できていることに感謝しつつ、一日一日無駄にすることのないように、自戒しようと思います。

 

トライアルに応募しました。

集中して取り組んでいきます。